夜中、床を「カサ…」と何かが走る音がして、スマホのライトで照らした瞬間に見えた赤茶色の細長い影。思わず息が止まり、心臓がドクンと跳ね上がる。ムカデは、そんな“平穏を一瞬で奪う存在”です。しかも相手は俊敏で、家具の陰に消えるのも早い。焦りますよね。「どこから入るの?」「塞いでも無駄だったら?」「もう二度と見たくない」――その気持ち、痛いほどわかります。
ただ、ここで大切なのは「怖さ」と「危険度」を切り分けることです。ムカデは見た目のインパクトが強いため、必要以上に不安が膨らみやすい一方で、侵入経路と室内環境の“弱点”を押さえれば、再発率を大きく下げられるケースが多いです。この記事では、侵入口の特定から塞ぎ方、レベル別の対処法、そしてプロに頼むべき境界線まで、家の構造に沿って徹底的に解説します。
まず最初に、あなたの状況が「すぐに処置が必要なケース」か、「落ち着いて対処できるケース」かを分けます。第一に、乳幼児や高齢者、アレルギー体質の方がいる、または寝室・ベビーベッド周辺で出た場合は、同日中に安全確保と再侵入対策まで進めることを推奨します。第二に、噛まれた(刺されたような強い痛みがある)場合や、腫れが急速に広がる、息苦しさ、全身のじんましんなどが出た場合は、医療機関への相談を優先してください。第三に、2日連続で見た、もしくは短期間に複数匹出た場合は、単発侵入ではなく“周辺にエサや隠れ場所がある”可能性が高いので、家の外周と床下・配管まわりの総点検が必要です。
一方で、1匹だけ、雨の翌日に玄関付近で見た、外から持ち込んだ荷物の近くで見た、といったケースは、落ち着いて段取りを組めば十分に対処できます。つまり、焦るべきは「ムカデがいること」ではなく、「侵入経路が放置され続けること」です。ここを一緒に潰していきましょう。
※この記事は、住まい・生活トラブル分野の専門的知見を持つライターが、製品仕様や一般的な施工基準に基づき執筆しました。状況により専門業者の判断が必要な場合があります。
この記事でわかることは大きく3つです。第一に、ムカデが家に入る“現実的な経路”と、家のどこが弱点になりやすいか。第二に、初心者でもできる初期対応から、本格的な塞ぎ工事(DIY)までのレベル別手順。第三に、どこから先はプロに任せた方が結果的に安いのか、後悔しない判断基準です。読み終えたときに「これならできる」「ここは業者に頼む」と迷いなく決められる状態を目指します。
トラブルのメカニズム解剖:ムカデはなぜ家に入るのか
ムカデの行動原理:湿気・暗さ・エサが揃う場所を探す
ムカデ侵入を理解するコツは、ムカデを「家に住みたい生き物」と考えないことです。多くの場合、ムカデは室内を“目的地”にしているのではなく、湿気のある隠れ場所や獲物(小さな虫)を求めて移動している途中で、家の隙間に入り込む可能性が高いです。つまり入口さえ塞げば、家の中で増殖するというより、外からの侵入頻度を大きく抑えられます。
ムカデが好むのは、第一に湿度が高く、第二に暗く、第三に小さな虫が集まりやすい環境です。すなわち、床下、基礎まわり、植栽の陰、石やレンガの下、落ち葉の堆積、排水溝周辺が“拠点”になりやすい。さらに、家の中では浴室・洗面所・キッチン・玄関土間のように温度差や水気がある場所が狙われやすい傾向があります。
侵入できる隙間の目安:あなたの家の「見えない穴」
ムカデは体が細長く、壁面も登れる種類がいます。ここが厄介で、「ドアを閉めているから大丈夫」「窓は開けていないから大丈夫」という“感覚的な安心”が通用しにくい。実際には、配管の貫通部、サッシのレール、網戸の隙間、換気口、基礎のひび、玄関ドア下の隙間など、家には無数の微小な開口が存在します。ムカデはゴキブリほど薄くはありませんが、家の弱点が複数重なると侵入可能性が高まります。
さらに重要なのが、ムカデ単体ではなく「エサの虫が入れる家」はムカデも入ってきやすい、という連鎖です。つまり、コバエや小型ゴキブリ、クモなどが出る家は、“ムカデにとって狩場の匂いがする家”になりやすい。ムカデ対策は、ムカデだけを見ても片手落ちで、侵入口の遮断と住環境の乾燥化、そしてエサ連鎖の断ち切りが三位一体になります。
放置のリスク:1週間後・1ヶ月後に起きやすいこと
「1匹だけだったし…」と放置すると、次のような悪化が起きやすいです。まず1週間後。雨の日や気温差が出た日に、同じ室内導線(玄関〜廊下、洗面所周辺など)で再遭遇する可能性が高まります。なぜなら、侵入口が同じであれば、外で活動した個体がまた同じ隙間に吸い込まれるように入りやすいからです。さらに、見失った個体が室内の暗所(家具の裏、洗濯機下、押し入れ奥)に潜むと、精神的ストレスが持続します。
次に1ヶ月後。侵入口の周辺でコバエや小型昆虫が増えやすい季節(梅雨〜秋口)だと、ムカデだけでなく別の害虫も「なんだか増えた」と感じることがあります。つまり、侵入口はムカデに限らない“外界と家の穴”であり、放置が長いほど虫の出現頻度が上がりやすい。結果として、防虫スプレーを場当たり的に使い続け、匂い・子どもやペットへの配慮・コストが積み上がるという二次被害が起きがちです。
そして見落とされやすいのが、噛まれたときのリスクです。多くは局所の強い痛みと腫れで済むことが多い一方で、体質や状況によっては症状が強く出ることがあります。寝具の中に入り込んだ場合、気づかずに触れてしまい、深夜にパニックになりやすい。だからこそ、侵入経路を「気合い」で追いかけるのではなく、家の構造に沿って理詰めで塞ぐのが最短ルートです。
プロが選ぶ道具と環境づくり:やみくもに塞がない準備
必須道具:なぜそれが必要なのか、代用の可否
ムカデの侵入口を塞ぐ作業は、「穴を埋めれば終わり」ではありません。長期に効かせるには、素材選びと施工の丁寧さが効きます。まず最重要は、隙間を見つけるための“光”です。具体的には、強い光量のLEDライト、できればペンライトより明るいヘッドライトが便利です。両手が空くので、見落としが減ります。スマホのライトでも始められますが、照射角が狭く影ができやすいので、細部のひび割れ確認では物足りない場面が出ます。
次に、隙間の扱いに応じて材料が変わります。小さく動きの少ない隙間なら「防虫パテ(配管まわり用)」が扱いやすいです。指で成形でき、初心者でも失敗しにくい。一方で、窓サッシやドア下のように開閉や振動がある場所は、パテだけだと割れたり剥がれたりする可能性があるため、隙間テープやモヘア、戸当たりゴムといった“可動部向け”の材料が安定します。
さらに、外周のひび割れや基礎の隙間には、コーキング(シーリング材)が効きます。ここで注意したいのは、100均の簡易コーキングは小規模補修には便利でも、屋外の雨風や紫外線では劣化が早まる可能性がある点です。長期目線なら、ホームセンターの屋外対応シーリング材を推奨します。ただし、コーキングは「下地が濡れている」「ゴミが残っている」「プライマー不足」などで失敗しやすい。後述するレベル2で、失敗しない段取りを詳しく扱います。
最後に、見落とされがちな必須道具が“清掃道具”です。隙間を埋める前に、埃や泥、カビを落とし、乾燥させる工程がないと、どんな高性能な材料でも定着しません。具体的には、刷毛、古歯ブラシ、掃除機の細ノズル、アルコールや中性洗剤、ウエスを用意すると、施工の安定度が一段上がります。
安全確保:服装・養生・換気を「先に」固める
ムカデ対策は“虫が主役”に見えますが、実際に事故が起きやすいのは作業中です。第一に、床下点検口や屋外外周での作業は姿勢が不安定になりやすく、転倒や腰痛のリスクがあります。第二に、コーキング材や殺虫剤を使う場合、換気不足で気分が悪くなることがあります。第三に、ムカデを見つけた瞬間に反射的に手を伸ばすと、噛まれる可能性が高まる。
そこで、服装は長袖・長ズボンを基本にし、袖口と裾が広い服は避けます。軍手よりも、できればゴム手袋や作業用手袋が安心です。屋外では帽子、室内でも髪が長い方はまとめると、作業に集中できます。また、作業範囲の床は新聞紙や養生シートで覆い、コーキングやパテが床材に付かないようにします。換気扇のある水回りでは必ず回し、窓を開けられるなら対角線上に開けて空気の流れを作ります。
そして、ムカデの“急な遭遇”に備え、殺虫スプレーや凍殺スプレー、密閉できる袋、そして長めのトング(火ばさみのようなもの)を手元に置いてから点検を始めてください。これは怖がりだからではなく、プロでも「不意打ちに備えて最短動線を作る」のが基本だからです。
【レベル1】初心者でも可能な初期対応(DIY):今夜の安心を作る
まずは“退治”より“安全確保”:寝室と動線を守る
ムカデを見つけた直後、多くの人が「倒さなきゃ」と思います。しかし、初心者が最初にやるべきは、第一に寝室の安全確保、第二に再遭遇しやすい動線の遮断、第三に侵入口の当たりをつけることです。ムカデは俊敏で、追いかけるほど見失いやすい。見失ったまま寝ると不安が増します。だから、寝室だけでも“封鎖状態”に近づけるのが先です。
具体的には、寝具を壁から少し離し、床に物を置かない状態にします。特に、ベッド下に衣類や段ボールがあると、ムカデの隠れ場所になります。次に、寝室のドア下の隙間が広い場合は、タオルを丸めて隙間に差し込みます。これは仮のバリケードですが、今夜の不安を減らす効果が高い。さらに、就寝時は薄暗い照明ではなく、廊下灯や足元灯を使い、暗がりを減らすと心理的にも落ち着きます。
遭遇した個体の対処:安心・安全・確実の順で
もし目の前にいて動ける状況なら、噛まれない距離を保ちながら対処します。選択肢は主に三つです。第一に、凍殺スプレーで動きを止める方法。噴射距離が取れるので安全性が高い反面、冷却剤が床材に付くと白化する可能性があるため、養生が必要です。第二に、ムカデ用の殺虫スプレーを使用する方法。即効性が期待できますが、換気と薬剤の扱いに注意が必要です。第三に、容器と厚紙で捕獲して屋外で処分する方法。ただし、初心者が無理に捕獲しようとすると、反射的に触れてしまうリスクがあります。怖いなら、無理に「綺麗に捕まえる」必要はありません。安全に距離を取れる方法を選ぶのが合理的です。
ここで、プロの現場でも意外と役に立つ小技があります。ムカデは“壁際”を走ることが多く、つい追いかけたくなりますが、逃げ道を塞ぐように「タオルを床に落として壁側の通路を遮断」すると、動線が制限されます。その上でスプレーを使うと成功率が上がりやすい。反射的に叩くより、逃げ道を塞いでから作業するのが安全です。
侵入経路の当たりをつける:出た場所から“逆算”する
レベル1では、家じゅうを完璧に塞ぐのではなく、「最短で再侵入を減らす」ことに集中します。目安は、出た場所から半径5〜7mの範囲です。なぜなら、ムカデは室内で長距離を彷徨うより、暗所に隠れて落ち着く傾向があり、侵入口の近くに潜みやすいからです。例えば、洗面所で見たなら、洗面台の配管が壁や床を貫通している部分、巾木と床の隙間、洗濯機パンの排水まわり、浴室ドア下、換気扇や点検口を重点的に見ます。
このとき、ライトで照らしながら“風”を感じる場所を探してください。手の甲を近づけると、微弱な隙間風を感じることがあります。さらに、夜に家の中を暗くし、外から玄関周りや基礎周りを照らし、室内側から光漏れがないか確認すると、穴の場所が見つかりやすい。これはプロが建物診断で使う「光のリークチェック」の簡易版で、道具が少なくても非常に有効です。
レベル1の塞ぎ方:応急処置としての“3点セット”
初心者が当日中にできて効果が出やすいのは、第一にドア下の隙間対策、第二に網戸・サッシの基本調整、第三に配管貫通部の応急塞ぎです。ドア下は隙間テープで厚みを調整し、閉めたときに紙がスッと抜けない程度を目安にします。ただし、閉まりが悪くなるほど盛ると生活に支障が出るため、少しずつ調整します。
網戸は“閉めているつもり”でも、サッシの構造上、網戸の位置がずれていると隙間ができます。一般的には、網戸は室内側ではなく屋外側のレールにはめ、窓の開閉位置を正しく合わせる必要があります。ここがズレると、数ミリ〜1cm程度の隙間が出ることがあり、虫が侵入する余地になります。もし「網戸なのに虫が入る」と感じているなら、まず窓と網戸の位置関係を疑ってください。
配管貫通部は、防虫パテを指で押し込み、穴の内側までしっかり詰めます。表面を平らに撫でて、埃が付着しにくい状態にしておくと長持ちしやすい。キッチン下、洗面台下、エアコン配管(室内側・室外側の両方)を優先すると、体感効果が出やすいです。
【レベル2】専用道具を使った本格的な対処法:家の弱点を“塞いで終わり”にする
侵入経路の核心:家の弱点チェックは「外→内」の順が鉄則
レベル2では、侵入口を“点”ではなく“線”で潰します。コツは必ず「外から見て、内に戻る」順にすることです。室内から塞いでも、屋外側に隙間が残ると、外壁内や床下に入り込む余地が残り、別の場所へ回り込む可能性があります。特に木造住宅は、外壁の内部に通気層がある構造が増えており、そこに虫が入り込むと、どこかの小さな隙間から室内に“出口”を探します。つまり、入口を外で塞ぐのが合理的です。
外周チェックのキーワードは「水が集まる場所」「土に近い場所」「暗くて狭い場所」です。具体的には、基礎と外壁の取り合い、通気口(基礎換気口)、給排水やガスの引き込み部、エアコン配管のスリーブ周り、玄関ドア枠下、勝手口、ベランダの排水口、室外機の裏、排水桝(ます)と配管の接続部、雨樋の排水先などが重点ポイントになります。
塞ぐ材料の選び方:パテ・コーキング・メッシュ・テープの使い分け
ここで失敗を避けるために、「その隙間は動くのか、濡れるのか、紫外線を浴びるのか」を考えます。動かない・室内・小さな穴なら防虫パテが手堅い。動く・室内なら隙間テープやモヘア、戸当たり材。濡れる・屋外・紫外線ありなら屋外対応コーキングが基本線です。そして、換気口や通気口のような“開口部そのものが必要”な場所は、塞ぐのではなく、網目の細かいメッシュでカバーする発想が重要です。
なお、メッシュは「細かければ細かいほど良い」と思いがちですが、通気が不足すると結露やカビの原因になりやすい。つまり、防虫と通気の両立が必要です。一般論としては、通気を阻害しない範囲で、虫が通りにくい目合いを選び、固定方法は屋外用のビス止めや耐候性のあるテープ・コーキングで行います。賃貸の場合は穴あけが制限されるので、後述のケーススタディで扱います。
コーキング施工で失敗しない段取り:乾燥・脱脂・マスキングが全て
私が現場で一番多く見た失敗は、「材料が悪い」のではなく「下準備が甘い」ことです。たとえば、雨上がりに基礎のひびを見つけて、すぐコーキングを打つ。すると、数日後に剥がれてくる。このパターンが多い。なぜなら、コーキングは濡れた下地や埃がある面には密着しにくいからです。
具体的には、第一にブラシで泥や苔を落とし、第二に乾いた布で拭き、第三に乾燥させます。乾燥の目安は「触って冷たく湿っている感触がない」「白く粉っぽい水分跡が出ない」状態です。季節や日当たりで変わるため、焦らず“乾いた面に施工する”原則を守ります。次に、アルコールなどで脱脂を行い、マスキングテープでラインを作る。マスキングは見た目のためだけではなく、余計な場所に材料が回り込むのを防ぎ、密着面を確保するための工程です。
そして、コーキングを打ったらヘラで押さえ、空気が入らないように密着させます。表面を撫でるだけだと内部に空洞が残り、そこが劣化点になります。最後にマスキングを剥がすタイミングが重要で、乾き切る前に剥がす方が、端が綺麗に仕上がりやすい。これらを守るだけで、耐久性が大きく変わります。
「塞ぎすぎ」の落とし穴:通気・排水・点検性を損なわない
ムカデが怖いと、すべての穴を埋めたくなります。しかし、家には“必要な穴”があります。換気口や通気口、排水口、給気口は、建物の健康を保つために存在します。ここを完全に塞ぐと、結露が増え、木部が湿ってシロアリやカビのリスクが上がる可能性があります。つまり、防虫のために別の大トラブルを呼ぶのは本末転倒です。
判断の目安は、「建物設備として機能している開口かどうか」です。機能が必要なら、塞ぐのではなくメッシュやフィルターで“通しつつ入れない”設計にします。逆に、配管貫通部のように、穴が大きいのに必要以上に空いている場所は、適切に塞いで問題ありません。この“必要な穴は残し、不要な隙間は潰す”がプロの考え方です。
侵入口トップクラス:エアコン配管・給湯器・洗濯機まわりを狙い撃ち
ムカデ対策で効果が出やすいのは、侵入口が「集中しやすい設備まわり」を先に潰すことです。代表例がエアコン配管です。室内機から外に抜ける配管スリーブ周りは、施工の都合で隙間が残りやすい。屋外側の配管カバーの裏も要注意で、そこが陰になり湿りやすく、虫の避難場所になります。対策としては、室内側は防虫パテで塞ぎ、屋外側は耐候性のあるパテやコーキングで隙間を埋め、配管テープの巻き直しも検討します。
次に給湯器まわりです。給水・給湯・ガス管の貫通部は複数あり、基礎付近に集中します。外周点検のとき、ここを見落とすと“塞いだつもり”になりやすい。配管の熱で周辺が乾きそうに見えても、雨水の跳ね返りや結露が起きることがあるため、「触って湿りがないか」「コーキングが割れていないか」を確認します。
そして室内の盲点が洗濯機です。洗濯機パンの排水トラップがある場合でも、パンの下や排水経路の継ぎ目に隙間が生まれることがあります。また、防水パンがない場合は床材と排水の取り合いが粗くなりがちです。ここは、点検→清掃→パテ・コーキングの順で丁寧に仕上げると、侵入だけでなく臭気対策にもつながります。
「プロだから知ってる失敗談」:薬剤だけに頼ると“出なくなる”のではなく“出る場所が変わる”
少し生々しい話をします。過去に「ムカデが出たから、とにかく強い薬剤を家の中に撒いた」というご家庭がありました。確かに数日は出ない。しかし1〜2週間後、今度はリビングではなく、寝室のクローゼット奥で出た。原因は、侵入口が塞がれていないまま薬剤で“居場所の条件”だけが変わり、ムカデが薬剤の匂いを避けて別ルートを探した可能性が高い、ということです。薬剤は重要な補助輪ですが、根本解決は侵入口の遮断と環境改善。ここを外すと、出現場所が変わるだけで、安心が定着しません。
【ケーススタディ】住居環境別の注意点:戸建てと賃貸で“正解”が変わる
戸建ての場合:外周環境と床下が勝負。庭の作り方で再発率が変わる
戸建ては、外周の環境要因の影響を強く受けます。第一に、基礎の周囲に落ち葉や雑草、植栽の密集、石材の堆積があると、ムカデの隠れ場所が増えます。第二に、家の外周に水が溜まる場所があると、ムカデのエサとなる虫が増えやすい。第三に、床下の湿度が高いと、家の“土に近い層”がムカデの経路になります。
戸建てで効果が出やすいのは、外周1mの管理です。具体的には、基礎に接する植栽を離し、落ち葉を溜めない。屋外の収納や古い鉢、レンガを壁際に寄せない。雨どいの排水先が泥で詰まっていないか確認し、排水桝のフタが浮いていないか点検する。こうした“地味な作業”が、結果として侵入圧を下げます。
床下点検口がある場合は、床下の湿気対策も検討します。ただし、床下換気扇や調湿材は家の構造・湿度条件により向き不向きがあるため、必要以上の設備投資をする前に、まずは通気口の詰まり、換気の阻害(物置の設置、植栽の密集)、雨水の流れを整えることが優先です。
マンション・アパート(賃貸)の場合:穴あけ禁止でもできる“現実的対策”
賃貸は、やれることが限られるからこそ、優先順位が重要です。まず、勝手に外壁や共用部に穴を開けたり、強い接着で原状回復が難しい施工をすると、退去時のトラブルになり得ます。だから、第一に室内側の「可逆的対策」を強化し、第二に管理会社に事実と希望を伝え、第三に共用部由来の可能性を潰します。
室内側の可逆的対策とは、隙間テープ、モヘア、パテ(剥がしやすいタイプ)、メッシュフィルター(両面テープで固定できる範囲)などです。例えば、玄関ドア下の隙間はドア下用のブラシ付きガードで改善しやすい。一方で、換気口のメッシュ追加は、すでにフィルターが付いている設備もあるため、風量が明らかに落ちるようなら控えます。換気は湿気を減らす重要な要素なので、虫対策と換気効率のバランスを取るのが賃貸のコツです。
また、マンションでは階段室、廊下、エレベーターホールなどの共用部に虫が集まり、玄関ドアの隙間から入るケースもあります。つまり、室内で一生懸命塞いでも、玄関周りの対策が弱いと再発しやすい。管理会社に相談する際は「いつ・どこで・何匹・天候」を具体的に伝えると、対応してもらえる可能性が高まります。
自力 vs プロ依頼の最終判断:ここから先は任せるべき境界線
判断の境界線:DIYでOKな範囲、プロが強い範囲
結論から言うと、目に見える隙間や配管貫通部の塞ぎ、ドア・窓の隙間調整、外周の清掃と簡易コーキング程度までなら、多くの方がDIYで対応できます。一方で、床下の湿気が強い、基礎に大きなクラックがある、外壁やサッシ周りから雨漏りの兆候がある、短期間に複数回出る、または近隣環境(竹林・雑木林・用水路)が近く侵入圧が高い場合は、プロの診断と施工の方が再発率を下げやすい傾向があります。
また、家族の事情も重要です。乳幼児やペットがいて薬剤使用に制限がある、夜勤で日中に睡眠を確保したい、恐怖感が強く生活が回らない。こうした状況では、精神的コストが積み上がりやすいので、早めにプロに寄せた方が結果的に“安くつく”ことが多いです。
| 比較項目 | DIY(自力) | プロ依頼(業者) |
|---|---|---|
| 費用の目安 | 材料費中心。小規模なら数千円〜。外周・複数箇所だと数千円〜数万円になりやすい | 点検・施工込み。内容により幅が大きいが、複合対策ほど高くなりやすい |
| 時間 | 調査に時間がかかる。半日〜数日で断続的に作業することが多い | 調査の経験値が高く、短時間で弱点を特定しやすい。日程調整は必要 |
| 再発リスク | 見落としや材料選定ミスで残る可能性。必要な穴を塞いで別問題が出るリスク | 建物構造に沿った“入口と環境”の同時対策が期待しやすい。保証が付く場合もある |
| 安全と負担 | 床下や高所、薬剤の扱いで負担増。恐怖感が強いと継続しづらい | 危険作業を任せやすい。薬剤選定や使用量も調整してもらえることが多い |
この表の読み方は単純で、「DIYのほうが安い」と結論づけるためのものではありません。注目すべきは、時間と再発リスク、そして安全と負担の列です。もしあなたが、休日に半日以上を点検と施工に割ける、作業が苦ではない、家族に薬剤制限が少ない、そして“出た場所の限定”が明確なら、DIYは有効です。一方で、仕事や育児で時間が取れない、出現場所がバラける、床下や外周が複雑、または恐怖感で生活の質が落ちているなら、プロの診断で一気に弱点を潰す方が結果的にリターンが大きい可能性が高いです。
迷うときは、まずレベル1とレベル2の「侵入口トップクラス(配管・ドア下・サッシ)」までをやってみてください。それでも短期間に再発するなら、あなたの努力不足ではなく、建物側の弱点が深い場所にある可能性が高い。ここが“プロの領域に入ったサイン”です。
二度と繰り返さないために:予防とメンテナンスの習慣化
日常の「ながら点検」:1回3分で侵入圧を下げる
予防は、根性ではなく“習慣”で勝ちます。第一に、雨の翌日に玄関周りと水回りの床をサッと見て、湿った段ボールや濡れたマットを放置しない。第二に、週1回だけ、洗面台下・キッチン下の扉を開けて、配管周りに水滴やカビ臭がないか確認する。第三に、月1回、ベランダ排水口や排水桝のフタ周りの落ち葉を取る。たったこれだけで、ムカデが好む「湿気」「隠れ」「エサ連鎖」の条件が崩れます。
また、室内の物量は“隠れ場所”を作ります。押し入れやクローゼットの床に直接段ボールを置くと、湿気が溜まりやすい。すのこを敷く、収納ケースを浮かせる、除湿剤を置くといった小さな工夫が、ムカデが居心地の良い暗所を作りにくくします。
おすすめの予防グッズ:役割で選ぶと無駄が減る
予防グッズは“何を解決したいか”で選ぶのが正解です。侵入経路を断つなら、隙間テープ、モヘア、防虫パテ、屋外対応コーキングが主役です。屋外の侵入圧を下げたいなら、家の外周に使える忌避剤や粒剤が補助になります。ただし、忌避剤は万能ではなく、効果が薄れる時期や雨で流れる可能性があるため、「撒いたから安心」ではなく「撒いた上で侵入口を塞ぐ」が基本です。
水回りの環境改善なら、換気(浴室乾燥や換気扇の運転時間の見直し)、排水口の清掃、防カビ対策が効きます。すなわち、ムカデ対策は“シール材+乾燥+清掃”のセットで初めて安定します。
Q&A:よくある質問とマニアックな疑問
Q1. ムカデはどこから入ることが一番多いですか?
一概に「ここ」と断定はできませんが、多くの家庭で頻出なのは、配管貫通部(キッチン下・洗面台下・エアコン配管)、玄関や勝手口のドア下、サッシや網戸のズレ、換気口まわりです。特に“水と関係する場所”と“外気と直結する場所”が重なると侵入の可能性が高まります。出現場所から半径5〜7mの範囲を、外→内の順で点検すると見つけやすいです。
Q2. 網戸を閉めているのに虫が入るのはなぜ?
多くは網戸の位置と窓の位置が合っておらず、サッシの構造上の隙間が開いている可能性があります。網戸は“閉めればOK”ではなく、窓の開け方との組み合わせで隙間が出ます。窓の左右どちらに寄せると隙間が消えるタイプかを確認し、戸車やモヘアの劣化があれば交換すると改善しやすいです。
Q3. ムカデを見失いました。今夜寝ても大丈夫?
不安が強い場合は、まず寝室を優先的に安全化してください。寝具を壁から離し、床の物を減らし、ドア下をタオルで仮封鎖し、足元灯で暗がりを減らす。さらに、寝室の入口付近や水回り動線に粘着トラップを設置すると、心理的にも“捕まる仕組みがある”状態になります。ただし、症状が出るほど眠れない場合は無理せず、翌日早めに侵入口を塞ぐ段取りを組む方が建設的です。
Q4. 噛まれた(刺されたように痛い)ときの応急処置は?
一般論としては、まず患部を流水で洗い、冷やして安静にし、症状の経過を観察します。ただし、腫れが強い、痛みが増す、吐き気や息苦しさ、全身のじんましんなどが出た場合は、医療機関に相談してください。自己判断で放置せず、特に小さなお子さんや持病がある方は早めの受診が安心です。
Q5. 殺虫剤を撒けば侵入しなくなりますか?
殺虫剤や忌避剤は有効な補助ですが、それだけで完全に侵入が止まるとは限りません。効果が薄れる時期があり、雨で流れたり、別ルートを探されたりする可能性があります。多くのプロは、侵入口を塞ぐ“物理対策”を土台にし、薬剤は侵入圧を下げるために併用する、という考え方を取ります。
Q6. 床下にムカデが多いと言われました。床下換気扇を入れるべき?
床下換気扇は状況によって有効ですが、万能ではありません。家の通気条件、周辺の湿気源、床下の構造によっては効果が限定的なこともあります。まずは基礎通気口の塞がれ(物置・植栽・土で埋もれていないか)、雨水の流れ、排水桝の状態、床下に水が溜まる要因がないかを確認し、それでも湿気が強い場合に、専門家の点検を踏まえて検討するのが無難です。
Q7. 古い家で隙間が多いです。全部塞ぐべき?
古い家ほど隙間が多い傾向はありますが、「全部塞ぐ」はおすすめしません。換気や通気として必要な開口があるためです。優先すべきは、室内への直接ルートになりやすい配管貫通部、ドア下、サッシ周り、床と壁の取り合いなど“生活空間直結の隙間”です。その上で、基礎周りのクラックなど構造に関わる部分は、ひびの幅や進行状況によっては建物保全の観点も含め、専門業者に相談する方が安心です。
Q8. ペットがいるので薬剤を使うのが不安です。どうすれば?
薬剤に依存しない対策としては、侵入口の物理的遮断と、室内の乾燥・清掃が中心になります。配管まわりやドア下、サッシの隙間を塞ぎ、エサになりやすい小虫を減らす。加えて、ペットのフードを出しっぱなしにしない、食べこぼしをこまめに拭く、湿ったタオルやマットを放置しない、といった環境管理が効きます。薬剤を使う場合も、ペットが触れない場所に限定し、換気を徹底するなど配慮が必要です。
Q9. 毎年梅雨になると出ます。季節対策のタイミングは?
多くの家庭で、梅雨入り前から初夏にかけて侵入圧が上がることがあります。おすすめは、梅雨前の晴れが続くタイミングで外周点検とコーキング補修を行い、水回りの換気習慣を整えることです。雨が続くと下地が乾きにくく、施工品質が落ちやすいので、できれば乾燥した日を狙う方が結果が安定します。
まとめ:侵入口を“理詰めで潰す”と、ムカデ不安は終わらせられる
ムカデの侵入は、運だけの話ではありません。第一に、ムカデは湿気・暗さ・エサが揃う場所を好み、家の外周と水回りはその条件が重なりやすい。第二に、侵入経路はドア下・サッシ・配管貫通部・換気口など、家の構造上の弱点に集中しやすい。第三に、薬剤だけに頼ると出現場所が変わる可能性があり、根本は“物理的に塞ぐ”ことです。
自力でできる範囲は意外と広いですが、短期間に再発する、床下や外壁など深いところが怪しい、時間や精神的負担が大きい場合は、プロに任せる判断も合理的です。大切なのは、あなたが弱いのではなく、家には“穴”があるのが当たり前だという前提に立ち、穴をひとつずつ潰していくこと。ここまで読んだあなたなら、もう手順は見えています。
Next Step:読み終えた今すぐやる最初の1アクションは、「出た場所から半径5〜7mの範囲で、配管貫通部とドア下、サッシの隙間をライトで確認し、写真を撮る」ことです。写真があれば、DIYの段取りも、業者相談も一気にスムーズになります。怖さを“作業”に変えた瞬間から、ムカデ対策は勝ち筋に入ります。

コメント