お風呂の排水が遅い。足元にぬるい水がたまり、洗い流したはずの泡がいつまでも渦を巻く。その状態に気づいた瞬間、頭の中では「このまま溢れたらどうしよう」「集合住宅だけど下の階に迷惑が…」と不安が一気に膨らみます。しかも“詰まり”は、原因が髪なのか、石けんカスなのか、皮脂なのかで、効く手当てが変わります。やみくもに薬剤を流したり、勢いよく水を流したりすると、むしろ状況を悪化させることもあります。焦るほど失敗しやすいトラブルだからこそ、落ち着いて「正しい順番」で切り分けるのが最短ルートです。
まず最初に、緊急度を分けましょう。第一に、排水口から水が逆流して床に広がっている、排水口付近から「ゴボゴボ」という空気を吸い込む音が強く出る、洗い場の排水だけでなく浴槽の排水も同時に遅い、さらに洗面所やキッチンの排水まで鈍い、こうした場合は配管の奥(共用部や通気まで含む)に詰まりがある可能性が上がります。すぐに大量の水を流すのは避け、応急的に止水・養生をしてから、プロまたは管理会社への相談を視野に入れてください。第二に、洗い場の排水だけ遅い、排水口のフタやヘアキャッチャーに髪が見える、掃除のタイミングが数週間空いている、こうした場合は比較的手前の詰まりで、落ち着いて対処できるケースが多いです。
この記事では、排水が遅くなるメカニズムを“構造”から解剖し、あなたの状況が「髪」「石けんカス」「皮脂(ヌメリ)」のどれに近いかを見分け、レベル別に安全な対処を実行できるように整理します。さらに、自力でやる範囲と、プロに切り替える判断基準、そして二度と繰り返さない予防習慣まで、一本で網羅します。
※この記事は、住まい・生活トラブル分野の専門的知見を持つライターが、製品仕様や一般的な施工基準に基づき執筆しました。状況により専門業者の判断が必要な場合があります。
トラブルのメカニズム解剖:なぜ「お風呂の排水」は遅くなるのか
お風呂の排水が遅くなる原因は、一言でいえば「水の通り道が細くなる」ことです。しかし実際には、排水口の表面が少し汚れただけで急に遅くなるわけではありません。ポイントは、髪・石けん・皮脂がそれぞれ違う性格で“固まり方”をすること、そして排水トラップという構造が、詰まりの発生場所をある程度決めてしまうことにあります。
排水トラップと封水:詰まりやすい場所が「最初から決まっている」理由
多くの浴室には、臭いを上げないための「排水トラップ」が組み込まれています。内部に水が溜まることで下水の臭気や虫を遮断する仕組みで、ここに溜まる水を「封水」と呼びます。封水は生活の安全装置ですが、一方でトラップ周辺は流れが緩くなりやすく、髪や石けんカスが引っかかりやすい“段差”や“くびれ”が生まれます。結果として、詰まりは排水口のすぐ下、つまりトラップ付近から育ちやすいのです。
髪・石けんカス・皮脂の三大原因:固まり方が違うから効く対処も違う
髪は、一本一本は軽いのに、絡むと強いネットになります。ヘアキャッチャーをすり抜けた短い毛、抜け毛、体毛が“糸”になり、そこに石けんカスや皮脂が絡むと、まるでフェルトのように締まって通水断面を奪います。石けんカスは、石けん成分が水道水中のカルシウム・マグネシウムと反応して“金属石けん”のような固形物になりやすく、乾くと白っぽく硬くなります。皮脂は、体から出る油分が冷えて固まるだけでなく、微生物の栄養になりやすく、ぬめりの母体になります。つまり、髪=絡む、石けんカス=硬い、皮脂=ぬめるという違いがあるため、物理的に取るのが効く場合、温度や界面活性で溶かすのが効く場合、酵素や薬剤で分解するのが効く場合に分かれます。
「流れが遅い」だけで放置すると何が起きるか:1週間後・1か月後の現実
今は“ちょっと遅いだけ”に見えても、排水のトラブルは時間で悪化する傾向が強いです。1週間程度放置すると、髪の絡みに皮脂と石けんカスが重なって層が厚くなり、排水が遅い状態が“標準”になっていきます。すると入浴のたびに排水口周辺に湿気が長く残り、雑菌の臭いが強まりやすくなります。
1か月放置すると、ぬめりが成熟し、排水口の周辺だけでなくトラップ内部に“ゼリー状の膜”が形成されることがあります。ここまで来ると、熱いシャワーを当てても一時的に流れが良くなるだけで、冷えるとまた詰まる、という揺り戻しが起きやすいです。さらに悪い場合、詰まりがトラップの先へ移動し、自力で触れない位置で固着します。そうなると業者作業の費用も上がりやすく、集合住宅では階下漏水のリスク評価も必要になり、精神的負担が増えます。
プロが選ぶ道具と環境づくり:作業の成否は「準備」で決まる
詰まり解消は、道具の強さよりも手順の整え方で失敗が減ります。浴室は滑りやすく、薬剤を使うと目や皮膚に刺激が出やすい場所です。加えて、排水口周辺は見えにくく、手が入りにくい。だからこそ、プロは最初に“安全な環境”を作って、短時間で終わらせます。
必須道具:なぜそれが必要で、100均で代用できるか
まず必須になるのがゴム手袋です。薄いタイプだと髪やヌメリの角が当たって破れやすく、薬剤を扱うときに不安が残ります。できれば厚手で長めのものを選びます。100均でも代用はできますが、作業中に破れてやり直すリスクを考えると、ドラッグストアの少し厚いタイプが結果的に安心なことが多いです。
次に、ライト(スマホのライトでも可)と、使い捨てのウエスまたはキッチンペーパーです。排水口の内部は影ができやすく、汚れの“芯”を見落とすと改善しません。ライトで位置を確認し、取り外した部品を置く場所をウエスで作ると、床が濡れて滑るリスクも下がります。
さらに、ピンセットやラジオペンチ、あるいは排水口用の「ワイヤーブラシ」「パイプクリーナーブラシ」があると手前の髪をつまみやすくなります。100均のピンセットでも一応可能ですが、髪とヌメリが絡むと滑るため、先端が噛みやすいものが有利です。加えて、ラバーカップ(いわゆるスッポン)は、浴室用の小さめがあると心強いです。ただし、後述する通り、排水トラップの構造によっては効きにくいので、万能と思わないのがコツです。
薬剤の選び方:塩素系・酸素系・酵素系の違いを「失敗しない言葉」で理解する
薬剤は“強いほど良い”ではありません。浴室の詰まりに使われる代表は、塩素系、酸素系(過炭酸ナトリウムなど)、酵素系や界面活性系(ジェルタイプのパイプクリーナーなど)です。塩素系はタンパク質や汚れを分解しやすい一方、刺激が強く、他の洗剤と混ぜると危険です。酸素系は汚れを浮かせる力があり、比較的扱いやすいですが、硬い石けんカスには限界があります。酵素・界面活性系は髪やぬめりに“ねばり”がある層へ浸透しやすく、浴室との相性が良いことが多いです。重要なのは、製品表示の使用場所と放置時間を守ることです。多くのトラブルは、効かないのではなく「届いていない」「時間が足りない」「流してしまった」で起きます。
安全確保:養生・換気・服装が“事故”を防ぐ
作業前に、床にバスマットやタオルを敷き、滑りやすい範囲を減らします。次に換気扇を回し、可能なら窓を少し開けます。薬剤を使わない場合でも、ヌメリやカビの臭いで気分が悪くなる人がいます。服装は、腕が濡れても不快にならない長袖より、肘までまくれる服が作業しやすいです。目をこすらないために、タオルを手の届く位置に置くのも、地味ですが失敗を防ぐプロの段取りです。
【レベル1】初心者でも可能な初期対応(DIY):まずは“手前”を確実に片づける
排水が遅いとき、多くの人がいきなり薬剤に頼りがちです。しかし、プロは逆です。第一に“見える範囲”と“触れる範囲”の固形物を取り除きます。これを飛ばすと、薬剤が汚れの外側だけに反応して、芯が残ることがあります。ここからは実況中継のつもりで、動きと確認点を一つずつ進めます。
ステップ1:排水口の部品を外し、髪の「核」を見つける
まず、排水口のフタとヘアキャッチャーを外します。外したら、ウエスの上に置き、髪やぬめりが床に落ちないようにします。ここで大事なのは、排水口の“中央”だけを見ないことです。髪は端に寄り、ぬめりは段差に付着します。ライトで照らしながら、指やピンセットで引っかかる部分を探します。もし髪が「ズルズル」と長く出てくるなら、手前の詰まりが主因の可能性が高いです。
このとき、勢いよく引っ張り切らないのがコツです。絡みが強いと途中で切れ、先端が奥へ落ちることがあります。多くのプロは、髪をつまんだらゆっくり回すように引くことを推奨します。繊維がまとまり、切れにくくなるからです。これが「プロだから知っている裏技」の一つで、急いで引っ張って失敗した経験から得た手つきです。
ステップ2:ぬるま湯で“流れの変化”を観察する(いきなり熱湯はNG)
固形物を取り除いたら、次に確認します。ここで熱湯を流したくなりますが、浴室の排水部材には樹脂部品が使われていることが多く、急な高温で変形するリスクがあります。まずは40〜50℃程度のぬるま湯を、洗面器で2杯分くらい、一定のリズムで流します。流れが急に改善したなら、手前の髪・ぬめりが主因だった可能性が高いです。改善しない場合でも、今の段階で「どれくらい遅いか」を体感でき、後続の対処の成否判定がしやすくなります。
ステップ3:排水トラップの掃除(外せるタイプは“外して洗う”が最短)
排水トラップが外せる構造なら、ここが勝負どころです。トラップは臭い止めの要なので、無理にこじらず、回して外すタイプか、持ち上げるタイプかを確認します。外したら、バケツまたは洗い場の端でぬるま湯をかけ、ブラシで“ぬめりの膜”をこすり落とします。洗剤は中性を基本にし、強い洗剤を使う場合は換気を保ちます。ここで重要なのは、汚れが落ちたかどうかを「手触り」で確認することです。ヌメリが残ると、触れた瞬間に“ぬるっ”とします。指先の感覚で滑らなくなるまで落とすと、改善が続きやすいです。
ステップ4:戻して確認。流れが改善したかは「時間」で判定する
部品を戻したら、再度ぬるま湯を流します。このとき、感覚だけで判断しないのがプロの癖です。洗面器1杯(約6〜8L)の水が、排水口に溜まらず10秒前後で淀みなく落ちるなら、かなり改善しています。逆に、流れはするが水面が上がってから落ちる、ゴボゴボが続く、という場合は、トラップの先に抵抗が残っている可能性があります。
【レベル2】専用道具を使った本格的な対処法:奥の“層”を剥がす
レベル1をやっても改善が弱い、あるいは一時的に良くなってすぐ戻る場合、詰まりは“膜”として残っていることが多いです。ここからは、薬剤や道具で「奥の層」を狙います。ただし、やり方を一つ間違えると、薬剤が流れず溜まってしまい、逆に作業がやりにくくなります。焦らず、順序を守りましょう。
薬剤を使う前の大原則:水が溜まっているなら“できるだけ掻き出す”
排水口に水が溜まっている状態で薬剤を入れると、濃度が薄まり、狙った汚れに届きません。まずは洗面器や小さなポンプ、スポンジで水をできるだけ汲み出し、排水口周辺を露出させます。これだけで薬剤の効きが変わります。多くの失敗は「薬剤が弱い」のではなく、「水で薄めている」ことにあります。
髪詰まりが強いとき:ワイヤーブラシやパイプクリーナーで“絡みを引っ掛けて回収”
髪が原因なら、物理で取るのが最短です。排水口用のブラシやワイヤーを、抵抗が出るところまでゆっくり差し込みます。ここで押し込むようにすると、髪の塊を奥へ押して固着させる恐れがあります。抵抗が出たら、回す、引く、少し戻すを繰り返し、絡みを“巻き取る”感じで回収します。引き抜くときは、床に落ちないように新聞紙やビニール袋を近くに用意しておくと、後片付けが一気に楽になります。
なお、金属ワイヤーで強くこすり過ぎると、樹脂部品の表面に傷がつき、そこに汚れが再付着しやすくなります。プロは「取れる範囲で止める」ことを徹底します。削って取るのではなく、絡みを剥がすのが目的です。
石けんカスが主因のとき:白い固着は“溶かす”より“剥がして流す”
石けんカスは硬く、ジェル系の洗剤が表面に触れても、中まで染み込みにくいことがあります。まずは分解できる部品を外し、白くザラついた部分をブラシでこすって落とします。そのうえで、製品表示に合ったパイプ洗浄剤を使って“残りの層”に作用させます。ここで重要なのは放置時間です。短いと表面だけで終わり、長すぎると換気不足や刺激のリスクが上がります。多くのプロは、“時計を見て”表示時間を守ることを強く推奨します。
また、石けんカスが多い家庭では、シャンプーやボディソープのすすぎ残しではなく、固形石けんや石けん系洗剤の使用量が原因になっている場合があります。つまり、詰まり解消と同時に、日常の使い方の見直しが再発防止につながります。
皮脂・ぬめりが主因のとき:臭いも伴う“ゲル状膜”は二段攻撃が効く
ぬめりは、微生物と皮脂が作る膜です。ここは二段構えが効きます。第一段階として、トラップやヘアキャッチャー周辺を物理的に洗い、膜の厚みを減らします。第二段階として、ジェルタイプのパイプクリーナーなど、付着性の高い洗浄剤を排水口周辺に回し入れ、表示時間置いてから、ぬるま湯で一気に流します。ここで冷水を使うと皮脂が固まり、再付着することがあります。最後はぬるま湯で流し切るのが回復を安定させるコツです。
ラバーカップ(スッポン)は使っていい?浴室での“効きやすい条件”とNG例
浴室でラバーカップが効くのは、排水口の形状に密着し、圧力がしっかり伝わる場合です。排水口の周りが凹凸だらけだったり、トラップの構造で圧が逃げたりすると、期待ほど動きません。やりがちなNGは、排水口に水がほぼ無い状態で空打ちすることです。水がクッションにならないと圧が伝わりにくく、逆に髪の塊を奥へ押すことがあります。もし使うなら、排水口の周囲を濡らして密着させ、洗面器で水位を作ってから、押すよりも引く動作を丁寧に行います。引きの圧で塊が手前に戻ることがあるからです。
【ケーススタディ】住居環境別の注意点:戸建て/マンション・アパート(賃貸)で何が違う?
同じ“排水が遅い”でも、住居環境でリスクと判断が変わります。ここを理解しておくと、無理なDIYで損をする確率が下がります。
戸建ての場合:屋外マス(排水桝)や通気が影響することがある
戸建てでは、浴室の詰まりが家全体の排水系に波及することがあります。浴室だけでなく、キッチンや洗面の流れも鈍い、排水時にゴボゴボ音が家中で出る、といった場合、屋外の排水桝に汚れが落ちて溜まっている可能性があります。このケースは浴室の排水口だけを触っても改善が薄いことが多いです。屋外点検は可能ですが、蓋の開閉や汚泥処理が必要で、慣れないと衛生的にも負担が大きいので、症状が広範囲なら早めに専門業者へ相談するのが現実的です。
マンション・アパート(賃貸)の場合:共用部リスクと“やってはいけない行為”が増える
集合住宅で怖いのは、階下への漏水と、共用配管の詰まりです。浴室の排水が遅いだけでなく、逆流が起きる、床に水が広がる、排水口から黒い汚れが上がる、といった場合は、共用部側の詰まりの可能性がゼロではありません。ここで無理に大量の水を流すと、他住戸に影響が出る恐れがあります。また、強い薬剤を大量に流す、配管を分解する、電動工具を使う、といった行為は、管理規約や原状回復の観点でトラブルになりやすいです。賃貸では「手前の清掃」までは自力、奥の作業は管理会社へ相談という線引きを持っておくと安心です。
自力 vs プロ依頼の最終判断:ここまではOK/ここからは切り替え
DIYで解決できる範囲は確かにあります。しかし、無理をして“奥で固める”と、結果として費用も時間も増えます。ここでは、境界線をできるだけ明確にします。
自分でやってOKになりやすい範囲:症状が限定的で、改善の反応がある
第一に、洗い場だけが遅く、浴槽の排水は普通である。第二に、ヘアキャッチャーやトラップの掃除で一度でも改善し、流れが安定している。第三に、異音や逆流が無く、他の排水設備は通常通り。こうした条件が揃うなら、レベル1〜2の範囲で十分改善が見込めます。作業は、同じ手順を“丁寧に”繰り返すことで成否が分かれます。
これ以上はプロ:逆流・複数箇所の不調・原因不明のゴボゴボがある
逆流して床に広がる、排水が一時的に良くなってもすぐ戻る、浴室だけでなく洗面やキッチンも同じタイミングで流れが悪い、排水時に大きなゴボゴボ音が続く、こうした場合は、共用配管や通気、屋外マスなど、個人が触れない領域が関わる可能性が高まります。ここで薬剤を重ねると、配管内に薬剤が滞留し、業者作業の邪魔になることもあります。「反応が無い」「範囲が広い」なら切り替えが賢い判断です。
比較表:DIYと業者依頼、費用・時間・リスクの現実
| 比較項目 | 自力(DIY) | 業者依頼 |
|---|---|---|
| 費用感 | 数百円〜数千円(ブラシ・手袋・洗浄剤など)。ただし道具を買い足すと増える。 | 軽作業で1万円台〜、状況により高圧洗浄や分解で上がることがある。 |
| 時間 | 準備〜片付けまで30〜90分が目安。原因が奥だと長引く。 | 予約と立ち会いは必要だが、作業自体は短時間で終わることが多い。 |
| 成功率 | 手前原因なら高い。奥原因だと難易度が急上昇する。 | 原因特定が早く、奥まで対処しやすい。再発要因も指摘されやすい。 |
| リスク | 薬剤の扱い、部品破損、塊を奥へ押すなど。賃貸は原状回復リスクも。 | 費用負担は増えるが、破損・漏水のリスク管理は任せやすい。 |
| 向いている状況 | 症状が浴室だけ、掃除で反応がある、逆流や異音がない。 | 逆流、複数箇所不調、原因不明、何度も再発する、賃貸で不安が強い。 |
この表の読み方はシンプルです。「費用が安いからDIY」ではなく、「原因が手前か奥か」で判断するのが失敗しません。DIYは“当たれば早い”一方、外れると時間と不安が積み上がります。反対に業者は費用がかかる分、原因特定と再発防止の提案まで含めて、安心を買える面があります。迷っているなら、まずはレベル1の清掃をして、改善が体感できるかを確認し、反応が薄ければ早めに切り替えるのが現実的です。
予防とメンテナンス:二度と繰り返さないために
排水詰まりは、特別な家庭だけに起きるわけではありません。むしろ、きれい好きで毎日使う家ほど、髪・皮脂・石けんが“毎日少しずつ”蓄積して発生します。予防は、負担の大きい大掃除ではなく、短時間の習慣で効きます。
ながら掃除の基本:入浴後30秒でできる“詰まりの芽”つぶし
入浴後、排水口のフタを開け、ヘアキャッチャーの髪を取る。これを毎回30秒やるだけで、詰まりの成長速度が変わります。髪は濡れているとまとまりやすく、乾いて絡む前に捨てられます。加えて週に1回、ヘアキャッチャーとトラップ周辺をブラシで軽くこすり、ぬめりの膜が厚くなる前に崩しておくと、臭いも出にくくなります。
石けんカス対策:すすぎ方と温度のコツ
石けんカスは、冷えるほど固まりやすい傾向があります。最後のすすぎをぬるま湯寄りにして、排水口周辺を軽く流して終えると、皮脂の固まりも残りにくくなります。逆に、冷水で終える習慣があると、皮脂が固まりやすく、ヌメリの土台ができやすいことがあります。もちろん体調や好みがあるので無理は禁物ですが、排水が遅くなりがちな家庭では“最後だけぬるま湯”が効くことがあります。
おすすめの予防グッズ:選び方の視点
予防グッズは、派手な機能より「続くかどうか」が最重要です。髪を取りやすい目の細か過ぎないヘアキャッチャー、置くだけで髪がまとまるタイプのネット、ぬめりが付きにくい素材の部品など、日々の手間を下げるものが結局勝ちます。逆に、目が細かすぎるとすぐ詰まって毎回のストレスになり、結局外してしまうことがあります。あなたの家の髪量や家族構成に合わせて、メンテ頻度が現実的なものを選ぶのがコツです。
Q&A:よくある質問とマニアックな疑問
Q1:熱湯を流せば詰まりは溶けますか?
皮脂は温度で柔らかくなるため、一時的に流れが良くなることはあります。ただし、浴室の排水部材には樹脂が多く、急な高温は変形リスクがあります。多くのプロは、まず40〜50℃程度のぬるま湯で様子を見ることを推奨します。熱で動くなら、原因は油分寄りの可能性が高い、という切り分けにもなります。
Q2:パイプユニッシュなどの洗浄剤は毎週使っていい?
製品の注意書きに従うことが前提ですが、頻度が高すぎると部材への影響や刺激のリスクが増えます。日常は物理清掃を中心にし、月1回程度のメンテ用途で使う、という運用が現実的なことが多いです。臭いが強い、ぬめりが出やすい家庭は、ジェルタイプを短時間で確実に使うほうが安全なことがあります。
Q3:排水口の部品が外れません。無理に引っ張って大丈夫?
無理はおすすめしません。破損すると、部品交換や原状回復が必要になります。外れない場合は、髪が固着している、構造が固定式、または方向が逆である可能性があります。取扱説明書が見つかるなら確認し、分からない場合は手前の清掃に留める判断が安全です。
Q4:排水が遅いだけで臭いはありません。放置しても大丈夫?
臭いが無いのは、封水が保たれている可能性が高いからです。ただ、流れが遅い状態は汚れが溜まりやすい状態でもあります。放置すると、遅さが“普通”になり、ある日急に悪化することがあります。早めにレベル1の清掃をして、改善傾向があるかを見るのが安心です。
Q5:ラバーカップを使ったら逆にゴボゴボ音が増えました
圧が空気を動かし、トラップ内の水位や空気の通りが変わった可能性があります。詰まりが奥にある場合、圧で汚れが動いて一時的に音が変わることがあります。連続使用で悪化することもあるので、改善が見られないなら一度中止し、手前清掃と原因の見直しに戻るのが無難です。
Q6:髪が少ない家なのに詰まります。原因は何が多い?
髪が少なくても、皮脂や石けんカスが多いと詰まりは起きます。特に、ボディクリームやヘアオイルの使用、固形石けんや石けん系洗剤の使用量が多い場合、排水に油分や固形分が増え、ぬめりや固着が進むことがあります。汚れの“質”が原因になるケースです。
Q7:賃貸ですが、どこまで自分でやっていい?
一般的には、ヘアキャッチャーやトラップなど「掃除の範囲」は自分で行って問題になりにくいです。一方、配管の分解、強い薬剤の大量使用、電動器具の使用はリスクが上がります。逆流や漏水の恐れがあるなら、管理会社への連絡を早めに行うほうが結果的に安心です。
Q8:改善したのに数日で戻ります。何が起きている?
手前の塊だけ取れて、奥の膜が残っている可能性があります。また、日々の髪や皮脂がたまりやすい状態が続いている場合、すぐ再形成されます。改善後1週間は、入浴後の髪取りを徹底し、週1回の軽いトラップ清掃で“戻り”が出るかを観察すると、原因の位置が絞れます。
Q9:排水が遅いとき、浴槽の水を一気に流しても大丈夫?
おすすめしません。詰まりの抵抗がある状態で大量の水を一気に流すと、溢れや逆流、場合によっては汚れの移動が起きます。特に集合住宅では、共用配管側の状況が不明なためリスクが上がります。まずは洗い場の手前清掃で反応を見てから判断するのが安全です。
Q10:業者に頼む前に、何をメモしておくとスムーズ?
流れが遅くなった時期、症状の範囲(浴室だけか、他もか)、逆流の有無、ゴボゴボ音の有無、最近使った薬剤や作業内容、これらを整理しておくと原因特定が早まります。特に、薬剤を使った場合は製品名と使用量、いつ使ったかを伝えると安全面でも役立ちます。
まとめ:排水が遅いときは「手前の除去 → 反応確認 → 奥の対処」の順で解決率が上がる
お風呂の排水が遅い原因は、髪・石けんカス・皮脂(ぬめり)が絡み合って“層”になり、排水トラップ付近から水の通り道を狭めることにあります。だからこそ、最初に手前の固形物を確実に取り、ぬるま湯で反応を見て、必要なら薬剤や専用道具で奥の膜を狙う、という順序が失敗を減らします。逆流や複数箇所の不調があるなら、配管奥の可能性が高まり、早めにプロへ切り替える判断が結果的に安全です。
最後に、あなたの不安はとても自然です。排水のトラブルは、目に見えない場所で起きるからこそ怖い。しかし、正しい順番で切り分ければ、多くのケースは落ち着いて解決できます。無理に背伸びをせず、「ここまでは自分」「ここからは任せる」という線を持つことが、住まいを守るうえで一番賢い選択です。
Next Step:まずは換気扇を回し、排水口のフタとヘアキャッチャーを外して、ライトで内部を照らしながら“髪の核”があるかを確認してください。そこで取れるものを取るだけでも、次の一手がはっきりします。

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