エアコンを「送風」にしただけなのに、部屋にモワッと嫌な臭いが広がる。冷房でも暖房でもなく、ただ風を回しているだけのはずなのに、鼻の奥に残るようなカビ臭、雑巾臭、酸っぱさ。「フィルターは洗ったのに変わらない」「むしろ送風の方が臭い気がする」「この風を吸って大丈夫なの?」——そう思って検索しているなら、あなたの疑問はとても自然です。その気持ち、痛いほどわかります。
結論から言うと、送風が臭いときの主な原因は、フィルターではなく、熱交換器・送風ファン・ドレンパン・吹き出し口周辺にあることが多いです。さらに厄介なのは、送風は“乾かす運転”として有効な一方で、内部に溜まった臭い成分をそのまま吹き出す運転にもなり得る点です。だから、正しい順序で対処しないと、「掃除したのに臭いが戻る」「スプレーで悪化した」という二度手間が起きやすい。
この記事では、まず「臭いのタイプ」から原因を見える化し、次にレベル別の対処を実況中継レベルで解説し、最後にプロ依頼の境界線と再発防止を整理します。読み終えたとき、あなたが自分の状況に合う最短ルートを選べる状態にします。
すぐに処置が必要なケースから先に明確にします。送風で鼻や喉が強く刺激される、運転すると咳が出る、焦げ臭い、ガリガリ・カラカラと異音がする、室内機から水が垂れる、白い霧が長く出続ける、これらは安全側に倒して使用を止め、点検やプロ相談を優先した方がよい可能性があります。
一方で、臭いはあるが我慢できる、換気すると軽くなる、動作は正常、水漏れや異音はない、というケースは、DIYの範囲で改善できることも少なくありません。ただし、DIYには「触ってよい範囲」があります。そこを守ることが、最短で成功するコツです。
※この記事は、住まい・生活トラブル分野の専門的知見を持つライターが、製品仕様や一般的な施工基準に基づき執筆しました。状況により専門業者の判断が必要な場合があります。
トラブルのメカニズム解剖:なぜ「送風だけ」で臭うのか
送風は、エアコン内部の空気を取り込み、送風ファンで吹き出す運転です。冷房のように熱交換器を強く冷やして結露させるわけではありません。しかし、臭いの原因は“今その瞬間の結露”だけではないのです。すでに内部に存在する汚れ膜(ホコリ+油+皮脂)、そこに定着したカビや細菌、そしてドレンパンに残る湿気が、送風で風に乗って放出されます。
臭いのタイプ別に「原因」を見える化する
送風の臭いは、いくつかのパターンに分かれます。第一に、押し入れのようなカビ臭い匂いなら、送風ファンや熱交換器、吹き出し口周辺のカビ・汚れが疑われます。第二に、雑巾のような生乾き臭、酸っぱい臭いなら、汚れ膜に雑菌が増えた可能性、あるいはドレンパンの水分・ぬめりが関係している場合があります。第三に、油っぽい、料理臭が混ざるなら、キッチン近くで油煙が取り込まれてフィンに付着していることが多いです。第四に、甘いような化学臭や焦げ臭がするなら、単なる汚れではなく電装部や樹脂の劣化など別の要因もあり得るため、無理に使い続けない方が安全です。
なぜフィルター掃除だけでは改善しにくいのか
フィルターは「空気の入口」でホコリを止めますが、完全に止められるわけではありません。微細な粉じんや油分はすり抜け、熱交換器に付着します。また、フィルターがきれいでも、送風ファンやドレンパンに汚れがあると臭いは出ます。つまり、フィルター掃除は正しい第一歩ですが、送風臭の本丸はその先にあることが多いのです。
放置のリスク:1週間後は室内の「空気の癖」、1ヶ月後は効率低下と再発ループ
臭いを放置すると、まず1週間ほどで「その部屋のエアコンは臭い」という状態が定着します。換気しても運転のたびに臭いが戻り、寝具やカーテンに薄く臭いが移ることもあります。さらに1ヶ月ほど放置して、汚れが厚くなると、熱交換効率が落ち、冷える・暖まるまで時間がかかったり、風量が落ちたりする可能性があります。臭いだけでなく、運転コストや快適性にも影響するため、原因を切り分けて手を打つ価値は十分にあります。
プロが選ぶ道具と環境づくり:送風臭対策は「濡らさない掃除」が基本
エアコン掃除の失敗で多いのは「水・洗剤・スプレーを入れすぎる」ことです。内部には基板、モーター、センサーなどの電装部があり、ここに水分が入ると故障につながることがあります。したがって、送風臭のDIYは、第一に乾いた汚れを回収し、第二に触れる範囲の汚れを拭き取るという順番が安全で、結果的に最短です。
必須道具:なぜ必要か、100均で代用できるか
第一に、マスクと手袋です。ホコリが舞うと、臭いだけでなく喉への刺激が増えます。100均でも十分ですが、密着感があるものが作業しやすいです。
第二に、掃除機(ブラシノズル推奨)です。ホコリは拭くと舞い上がりやすいので、吸って回収するのが合理的です。代用が難しい道具ですが、なければ粘着クリーナーや濡らし過ぎない拭き取りで補う必要があります。
第三に、硬く絞れるマイクロファイバー布と、使い捨てのウェットシート(素材適合確認)です。吹き出し口の汚れは、ここで改善することが多いです。アルコール入りは便利ですが、樹脂素材によっては白化することもあるため、目立たない場所でテストします。
第四に、養生用ビニールとタオルです。落ちてくる汚れを回収し、床や壁を守ります。100均で十分です。
第五に、懐中電灯です。送風ファンの汚れは暗いと見えません。スマホライトでもよいですが、角度を変えながら確認すると、黒点や汚れ膜が見えやすくなります。
安全確保:電源遮断・養生・換気・足場
作業前に電源を切り、可能ならコンセントを抜きます。脚立は安定したものを使い、椅子の上に立つのは避けます。窓を開け換気し、エアコン下にビニールとタオルを敷いて養生します。ここまで整えれば、作業そのものは落ち着いて進められます。
【レベル1】初心者でも可能な初期対応(DIY):フィルター以外の「最短3点」
レベル1の狙いは、内部の“臭いの出入り口”を整えることです。送風臭は、吹き出し口周辺の汚れで体感が変わることが多い一方、奥のファン汚れはDIYで触りにくい。この差を利用して、最短で「改善する臭い」か「プロ領域の臭い」かを判定します。
実況中継:作業開始0分〜20分でやる手順
まず、窓を開け換気してから、エアコンの電源を切ります。前面パネルを開け、フィルターを外します。ここはすでに掃除済みでも構いませんが、フィルターが濡れていたり、柔軟剤の香りが強く残っていたりする場合は、臭いの混在が起きることがあります。必要ならぬるま湯で洗い、日陰で乾かします。
次に、フィルターの奥に見える熱交換器(アルミフィン)の表面を観察します。ホコリがふわっと付いている程度なら、掃除機のブラシノズルで「押し付けずに」吸って回収します。フィンは曲がりやすいので、撫でるように近づけ、触るか触らないかの距離感で進めるのがコツです。
三つ目が最短で効くことが多い工程で、吹き出し口のルーバーと、その奥の見える範囲を、固く絞った布で拭きます。黒い点がついている場合、拭くと布に黒い筋がつくことがあります。拭くときは奥へ押し込まず、手前へ引き出すように汚れを回収します。ウェットシートを使う場合も、滴るほど濡らさないことが重要です。
確認:送風運転で「臭いの変化」を観察する
フィルターを戻したら、換気したまま送風を5分回し、臭いを確認します。このとき、顔を吹き出し口に近づけず、少し離れて空気の変化を感じ取るのが安全です。改善がはっきり出るなら、吹き出し口周辺と軽いホコリが主因だった可能性が高いです。逆に、変化がない、あるいは送風の臭いが強いままなら、ファンやドレンパンの汚れが疑われます。
プロの小技:ピークを外に逃がす「初動換気ブースト」
すぐ運転したい事情があるとき、プロが現場で一時的に提案するのが「窓全開+風量最大+最初の5分は人を近づけない」です。これは根本解決ではありませんが、臭い成分の室内滞留を減らし、吸い込む量を減らせます。逆に、窓を閉めたまま送風を回すと、臭いが部屋に定着しやすいので、このセットが条件になります。
【レベル2】専用道具を使った本格的な対処法:原因別に“やること”を変える
レベル2は、フィルター以外の原因に踏み込む段階ですが、DIYで触ってよい範囲を守ることが最重要です。特に送風ファンとドレンパンは臭いの原因になりやすい一方、自己流洗浄で故障や水漏れを招きやすい領域でもあります。したがって、レベル2は「掃除を深くする」よりも「原因別に手を打つ」発想が失敗しにくいです。
原因A:油っぽい臭い・料理臭が混ざる場合(キッチン近く)
油煙が多い環境では、熱交換器表面に薄い油膜が付き、そこへホコリが貼り付いて臭いが出ます。この場合、レベル1のホコリ除去で風量が戻ると、臭いが軽くなることがあります。ただし油膜そのものはDIYで完全に落としにくく、無理に洗剤をかけると汚れが流れて詰まりやすいです。改善が弱い場合は、分解洗浄の方が結果的に早いことが多いです。
原因B:酸っぱい・生乾き臭が強い場合(雑菌・ぬめり)
酸っぱさが強い場合、ドレンパン周辺のぬめりや、汚れ膜に雑菌が増えている可能性があります。ここでよくある失敗が、洗浄スプレーを大量に噴射して、落ちた汚れがドレン系に詰まり、水漏れを起こすことです。したがってDIYでできるのは、第一に送風乾燥を徹底し、第二に運転後の内部乾燥を習慣化し、第三に改善しないならプロ洗浄へ切り替える、という戦略になります。
原因C:カビ臭が強く、吹き出し口奥に黒点が広がる場合(ファン汚れ)
吹き出し口の奥に黒点が広く見え、拭いても取れず、送風で臭いが続くなら、送風ファン汚れが濃厚です。ここはDIYで最も事故が起きやすい領域で、自己流で濡らすほど基板・モーターの故障リスクが上がります。したがって、ファン汚れが疑われる時点で、レベル2の正解は「無理に洗わないで、プロへ」という判断が、最短で確実です。
NG例:やりがちな失敗を先に潰す
やってしまいがちなのは「臭いが消えるまでスプレーを追加」することです。臭いが残っているのは、奥の汚れ膜が残っているからで、スプレーの量では解決しません。さらに「濡れたまま運転を止める」と、内部が湿った状態で放置され、臭いが戻りやすくなります。DIYでは、濡らさない掃除を基本にし、最後は必ず乾燥運転で締める。この原則が、失敗を大きく減らします。
【ケーススタディ】住居環境別の注意点:賃貸は「責任範囲」と「原状回復」を意識する
送風臭の対処は、住居形態でリスクの意味が変わります。戸建ては自己判断で進めやすい反面、複数台あると運用差が出やすい。賃貸は、分解や内部洗浄で故障させると負担が重くなる可能性があるため、線引きが重要です。
戸建ての場合:悪臭が出る部屋の「生活臭」が原因のこともある
同じ家でも、キッチン近く、寝室、ペット部屋などで臭いの質が変わります。エアコンは部屋の空気を吸うので、部屋側の臭いが内部に蓄積します。たとえば、アロマや芳香剤を強く使う部屋では、樹脂に香り成分が吸着し、送風時に混ざって不快になることがあります。部屋の臭い対策とセットで考えると、改善が早いことがあります。
マンション・アパート(賃貸)の場合:DIYは「フィルター+見える範囲+乾燥」まで
賃貸では、フィルター清掃と吹き出し口の拭き取り、送風乾燥の運用改善は通常問題になりにくい範囲です。一方で、カバー分解や内部洗浄は故障時の責任が曖昧になりやすいです。送風ファン汚れが疑われるなら、管理会社へ相談し、クリーニングを手配する方が安心です。
自力 vs プロ依頼の最終判断:境界線を「症状」で決める
自力でOKの範囲は、レベル1の手順で臭いが軽くなる、あるいは「最初だけ」で数分で落ち着く場合です。この場合は、運転後の乾燥と定期清掃で再発を遅らせられる可能性が高いです。
これ以上はプロのサインは、第一に吹き出し口奥の黒点が広範囲、第二に送風で臭いがずっと続く、第三に体への刺激(咳、目の痛み)が出る、第四に水漏れ・異音・焦げ臭がある、第五にDIY後に臭いが悪化した、という場合です。ここは、分解洗浄で汚れ膜を落とし、汚水を回収し、電装部を守れるプロの領域です。
| 比較項目 | DIY(自力) | プロ依頼(分解洗浄など) |
|---|---|---|
| 費用 | 数百円〜。最短で今日できる。 | 幅はあるが、原因層に届きやすい。 |
| 時間 | 30分〜2時間。根本原因が奥だと限界がある。 | 予約が必要なこともあるが、短時間で改善しやすい。 |
| リスク | 濡らしすぎで故障・水漏れの可能性。触れる範囲を守れば低い。 | 汚水回収・養生で事故が起きにくい。業者選定は重要。 |
| 効果 | 吹き出し口・軽いホコリ・運用改善に強い。 | ファン・ドレンパン・奥の汚れ膜まで届きやすい。 |
表のポイントは、DIYは「安全に触れる層」には強いが、「臭いの本丸が奥」だと届かないということです。したがって、迷ったらレベル1で変化を見て、変化が弱ければプロへ切り替える。この判断が、最短で失敗しにくいです。
予防とメンテナンス:送風臭を出さない運転習慣と部屋づくり
送風臭の再発防止は、掃除よりも「内部が濡れている時間」を短くすることが効きます。冷房や除湿のあとに内部が湿ったまま止まると、汚れ膜が育ちやすくなります。
運転後の乾燥:内部クリーンがあるなら使い、ないなら送風で締める
内部クリーン機能がある機種は、積極的に使う価値があります。ない機種でも、冷房後に送風を20〜30分回すだけで湿り時間が短くなることがあります。毎回完璧は無理でも、湿気の季節だけ徹底するだけで差が出ます。
フィルター掃除の頻度:季節の始まり+月1が現実的
やる気がある日にまとめてやるのが続きます。シーズン初運転前に一度しっかり掃除し、その後は月1を目安にすると、臭いの戻りが遅くなりやすいです。キッチン近くやペット環境では、もう少し短い間隔が向きます。
部屋側の改善:油煙・タバコ・芳香剤が「内部の臭いの貯金」になる
エアコンは部屋の空気を吸うので、部屋の臭い成分が内部に貯まります。調理中は換気扇を強め、タバコや強い香りはエアコン稼働中に控えめにするだけでも、長期的には臭いの蓄積が減ります。サーキュレーターで空気を回すと、湿気が一箇所に溜まりにくくなり、カビの条件を減らせます。
Q&A:よくある質問とマニアックな疑問
Q1. 送風の方が臭いのはなぜ?
送風は内部の臭い成分をそのまま吹き出しやすい運転だからです。冷房や暖房は温度変化で臭いの感じ方が変わることもありますが、送風は“内部の匂い”が出やすい傾向があります。
Q2. フィルターは洗ったのに臭いが取れません
原因が熱交換器・ファン・ドレンパン側にある可能性が高いです。レベル1の吹き出し口拭き取りと、フィン表面のホコリ回収で変化が出るか確認し、変化が弱ければプロ領域の可能性が上がります。
Q3. 送風を回していれば乾いて臭いが消えますか?
内部が湿っている場合、送風乾燥で改善することがあります。ただし、汚れ膜が厚いと、乾かしても臭い成分が残るため、消え切らないことがあります。
Q4. 市販の洗浄スプレーは使っていい?
製品と機種の相性、養生、汚水回収の有無でリスクが変わります。自己流で奥まで大量に噴射すると、基板への水分侵入やドレン詰まりで水漏れが起きることがあります。まずは濡らさない掃除で変化を見て判断する方が安全です。
Q5. 黒い点が見えます。自分で全部拭けば大丈夫?
見える範囲は拭いて改善することがありますが、奥に広がっている場合は拭き取りでは届かないことが多いです。無理に奥へ手を入れて濡らすと故障リスクが上がるため、広範囲ならプロ洗浄が確実です。
Q6. 送風で部屋の臭い(タバコ、料理)が強くなります
部屋の臭い成分がエアコン内部に吸着している可能性があります。部屋側の換気・脱臭とセットで考え、エアコン運転中の発生源(油煙、強い香り)を減らすと、長期的に改善しやすいです。
Q7. 賃貸ですが、どこまで自分で触ってOK?
一般的にはフィルター清掃、前面パネルの開閉、吹き出し口の拭き取り、送風乾燥の運用改善は問題になりにくい範囲です。内部洗浄や分解は故障時の責任が絡むため、管理会社に相談する方が安心です。
Q8. プロに頼むタイミングはいつが良い?
送風で臭いが続き、黒点が多い、刺激が強い、DIYで変化がない、という時点で検討価値が高いです。シーズン前は混みやすいので、症状が軽いうちに早めに動く方が予約が取りやすいこともあります。
まとめ:送風臭は「フィルターの先」が本丸。最短は“切り分け→触れる範囲→乾燥”
エアコンの送風が臭いとき、フィルターだけを疑うと遠回りになりがちです。臭いの本丸は、熱交換器の表面汚れ、吹き出し口の汚れ、そして奥の送風ファンやドレンパンにあることが多いです。まずは換気しながら、フィン表面のホコリ回収と吹き出し口の拭き取りを行い、最後に送風で乾燥させて変化を確認する。これが最短で失敗しにくい王道です。変化が弱い、黒点が広い、刺激が強いなら、DIYで粘らずプロへ切り替えることが、結果的に最短になります。
Next Step:読み終わった瞬間にまずやるべき「最初の1アクション」は、窓を開けて換気し、前面パネルを開けて吹き出し口の見える範囲を硬く絞った布で拭くことです。その場で臭いの変化が出やすく、次の判断が一気に楽になります。

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